05:メイド・イン・ジャパン

beruf baggageのバッグ作りのインサイドストーリーを探るインタビュー第二回目のテーマは「メイド・イン・ジャパン」。自転車乗りのアイデアやフィードバックを取り入れたバッグを作ってきたberuf baggageの全ての製品は、メイド・イン・ジャパンのハンドメイド生産です。今回は日本で生産するということについての、こだわりや、日本製ということを通してのメッセージなどについて訪ねてみました。

全てハンドメイドかつ日本製として作られているberuf baggageのアイテムは、どのような行程を経て作られているか教えていただけますでしょうか? またメイド・イン・ジャパンということでの優れた面などもお知らせください。

全ての製品は「裁断」「縫製」などといった、それぞれの工程別に分業制というスタンスによって製造されていまして、工程ごとに確かな知識と経験値をもった職人さん達に協力してもらっています。大きな製造ラインを持つ工場で、全ての工程を一括して行うのではなく、各工程を1人の職人さんが最初から最後まで責任をもって手掛ける工房がいくつも繋がり、ひとつの製品が作られています。

裁断にしても縫製にしても、その道一筋の職人さんのこだわりが込められているので、とにかく仕事が丁寧で、担当する工程のひとつ前の工程の品質確認を、職人さん自身で行うため、高い品質の製品を安定的に製造できるのが強みです。作り手のプロである職人の手から手へとつながって生み出された製品は、最後は使い手のプロであるお客様の元へと繋がっています。

染色から仕上がってきた生地を、熟練の職人が慣れた手つきで、正確に垂直にカットする。取材時はS-Collectionのナイロン記事をカット中。生地を余すところを少なくするため、最初のカットはとても重要とのことだ。

バッグなどのパーツに合わせたサイズ(数値)を、裁断する機械に入力し、大きめにカットした生地を等間隔で裁断をしていく。機械任せと思いきや、時には数値を入力せずに目測で裁断を進める場合もある。

取材時はberuf baggage S-Collectionの「"RUSH" SHOULDER SMALL」の裁断を進行中。各パーツごとの裁断がこのようにして進められて、その後、各パーツを裁断した状態で、縫製職人にバトンタッチする。

beruf baggageの特徴のワンポイントとして、ブランドのラベル(タグ)は自転車の廃材(自転車用チューブ)を使用して作られているとのことですが、チューブを使用した理由やこだわりやエピソードをお聞かせいただけますでしょうか?

ブランド設立の2006年当時は世の中がエコブーム真っ只中でしたので、その流れに感化されて(笑)出てきたアイデアがタイヤチューブのリユースでした。バッグ全体に使うとなると、匂いや重さ、使い心地といった部分でどうしてもネガティブなイメージがあったので、ブランドのアイコンとなるパッチタグに使うことにしました。最初にリリースしたのがメッセンジャーバッグだったこともあり、このパッチタグにはブランドとしてのメッセージや思いを込めるようにしています。2011年の3月11日以降は「PRAY FOR JAPAN」というワードを入れています。(※アイテムによっては異なるワードの場合もあるとのこと)

このパッチタグの材料となる自転車タイヤのインナーチューブは、街の自転車屋さんに協力してもらってパンク修理後に廃材となってしまうものを集めています。回収したチューブは丁寧に洗浄して、乾燥させてから刺繍屋さんへと届けられてブランドのパッチタグへと生まれ変わります。リユースとしての良さを活かすために、チューブに印刷されている文字や図柄もそのまま使っているのですが、たまに汚れと間違われてしまうことがあります(笑)。そんな時は製造工程とパッチタグに込めた思いを説明させていただいて、こちらの意図をご理解いただいています。このパッチタグがご購入のポイントになった、という声をいただくこともあり、とても嬉しいです。

余談ですが、ブランド設立から1年間は僕自身でチューブを回収・洗浄していたのですが、さすがに手が回らなくなってしまったので今では実家の母がこの工程を担当しています。

洗浄行程から届いた自転車用チューブを脱脂などを経て刺繍行程に。「26✕1.5 inch」などといったような、自転車チューブならではの文字の部分を避けずに、あえてそのままで刺繍の作業に進めるところが興味深い。

クリーニングされたチューブを、プレス機にかけてラベルの大きさに切り取る作業。1~2mmの間隔で、次々とリズム良くプレスしていく熟練の技。

自動で刺繍を行う機械にて、チューブのラベルを仕上げていく。チューブに刺繍をするということは大変困難で、機械の調整も特別なものとなるとのことで、担当する刺繍工場では、beruf baggageのラベル専用のラインを確保しているとのこと。

日本製で作り続けられているberuf baggageのアイテムですが、ところで現在、日本におけるバッグの製造業はどのような状況でしょうか?

日本のバッグ製造業の現状は決して明るいとは言えません。製品の価格競争を過剰に意識するあまり、モノづくりにおいて製造コストが最優先事項になってしまうことで、より賃金の安い国や地域を求めて製造現場そのものが移動していきます。結果として後継者不足に悩まされたり、仕事そのものが激減してしまった製造業者がたくさん存在しています。そのような状況下でも純国産のスタンスを貫き、製造を続けているブランドやメーカーの企業努力は、どの分野においても相当なものだと思います。

やはり日本で製造するということは、バッグ製造にかぎらず大変なことなのですね。そのような高いハードルを超えてまででも作るということですが、日本製のバッグということを通じて、買ってくれた人や、購入を検討している人へ、どのようなことを伝えたいですか?

実は、僕自身「日本製」であるということに対して必要以上にこだわっているわけではないんです。それこそ、製造コストの安い国や地域で製造した方が安価にたくさん作れて、今よりたくさん売れる、ような気もしますし……。ただ、実家が日本でのバッグ製造を生業にしていて、僕自身がその環境下で育ってきたことで受けた影響がとても大きいのです。日本の職人さん達の、モノづくりに対して「真摯に向き合う姿勢」と「丁寧な仕事」を間近で見てきた結果として、必然的に日本でのモノづくりを選んだような感じですね。

また、ブランド名である「beruf」というワードは、ドイツ語で「使命・天命・職業」というニュアンスの意味をもっています。このブランド名には様々な職業の方に満足して使っていただけるバッグを作りたいという思いと、小さなころから身近にいた職人さん達の仕事をもっと世に広めたいという、自分自身の使命感みたいな思いが込められています。

なので僕自身がberuf baggageのバッグを通してお客様に伝えたいことは、単純な「日本製」ということではなく、丁寧に手間をかけて製品を作り上げていく「beruf baggage製」というモノづくりへの姿勢そのものです。バッグの良し悪しというのは、購入していただいてから実際にお使いいただくまで判断するのが難しいと思っていて、本当に自分に合うバッグに巡り合うことは、実はかなり難しいことだと思うんです。だからこそ、真摯に向き合って、丁寧に手間をかけて作られているという部分で、バッグを選ぶお客様にとっての保証や安心材料を提供できればと思っています。

ありがとうございます。
自転車のある生活を軸にしたバッグ作りから広がる、ライフスタイルの提案と、背負って自転車に乗りたくなるようなアイテムの提案を、今後も楽しみにしています!

beruf baggageのデザイナー、佐野氏が描いたバッグの仕様書(※beruf PICK UP Vol.01をご覧ください)を元に、縫製の職人が、まずはパーツごとの縫製を進め、最後にそれぞれの部分を繋ぎ合わせてバッグを完成に導く。

日本の縫製工場では、メンテナンス性や耐久性、操作のシンプルさから、今でも旧式の工業用ミシンを使用しているところが多いとのこと。beruf baggageのバッグを担当する縫製工場でも旧式のミシンを使用している。

完成間近のバッグパックを裏返しにしている状態。日本の熟練の職人ならではの丁寧な作業は、普段見えないところにもしっかりと反映されている。

佐野賢太(さの けんた)1980年7月9日・埼玉県生まれ。
beruf baggageデザイナー。2006年に同ブランドを立ち上げ、メッセンジャーバッグ3アイテムからスタートし現在に至るまで、自転車のライフスタイルを提案するようなバッグを中心としたアイテムを提案する。趣味はサーフィンと音楽と自転車通勤。

著者・プロフィール

石川 望(いしかわ のぞむ)
自転車雑誌「Bicycle Magazine」の編集長、「Bicycle Navi」の編集に関わった後、自転車と写真をテーマとした「Bicycle Photo Magazine」を立ち上げた編集者兼フォトグラファー。国内外の自転車シーンや旅の写真撮影、ワークショップの講師など、自転車と写真・カメラに関係するアクションや、アウトドアやアパレルブランドの撮影や商品テストなどに関わる。

http://nozomuishikawa.tumblr.com/

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